トップ > BLOG
2023.07.21
「結婚相談所への入会まで」
「はー、またあの子も結婚か」土曜日の昼下がりの午後、美咲は一人自分の部屋でスマホに届いた友人からの結婚報告のLINEを見つめていた。
思えば第一次、第二次と結婚ラッシュは去り、周りに独身女子は少数派となっていた。
美咲は32歳の会社員。実家暮らし。ショートカットで見た目はおとなしめで、同性の友達は多いがどちらかというと控えめなタイプだ。恋愛経験は豊富ではなく、2年以上彼氏はいない。滅多に公言こそしないが結婚願望はないと言えば嘘になる。思えば30歳を過ぎて合コンや出会いの機会は顕著に減った。
このままでは結婚とは縁遠い人生となる確率が高いことは確かなことだ。
余り積極的に出会いを求めたことはない美咲だが藁にも縋る思いで大手の結婚相談所の門を叩いた。
受付を済ませた後、営業のスマートな女性からシステムの説明を受けた。一か月に100人お見合いを申し込める。会員数は数万人。これだけチャンスがあればいかに恋愛下手と言われることが多かった自分でも結婚するのは難しいことではないだろう。
他にも複数の相談所を回った。耳障りの良い言葉で勧誘を受けたが、それらの相談所には一か月に申し込める人数以外に大きな差はないように感じられ、その日では決めかねた。
迷っている間に2ヵ月が経過していた。
その間にも月日は流れ歳を重ねるごとに婚活が不利になることは想像がつく。結局、美咲は最初に話を聞いた相談所に入会することを決めた。それでも申し込みを終え、帰路につくときの美咲の足取りは今後訪れる期待を表すかのように早かった。
「相談所での活動開始」
職場で結婚相談所のサイトを見るのは登録して活動していることを友人にも絶対に明かす気のない美咲にとってはあり得ないので、自宅でくつろぎとわくわくが入り混じった気持ちでスマホの会員検索画面で気に行った人を探して、お見合い申し込みをしていった。
気づけば60件にもなっていた。後は結果を待つだけ。しかし、相手からはお断りの返事ばかりが来る。
想定外な事態。
こちらにも申込みは何件かは来たがパッとしない男性ばかりだ。当然のようにお断りを入れた。さらに、誤算だったのがカウンセラーが機能していないことだ。
機能していないとは語弊があるかもしれない。確かに月に一度面談はあるが具体的なアドバイスがもらえる訳でもなく、雑談のような話に終始するばかりだった。このままでは埒が明かないと気乗りはしなかったが申し込みのあった男性と会ってみることにした。見た目は可もなく不可もない。年収は同年代の平均以上をクリアしている。
ただ、美咲同様に恋愛経験が豊富でないことは明らかで話の面白みが明らかに欠けているところが気に入らなかった。
仮交際に進むつもりはなかったのでスマホ画面からお断りを入れようとした矢先、先方の相談所からお断りされたとの連絡が入った。胸元をえぐられたような気持ちになった。あんな魅力のない男性から「ノー」と言われるほどプライドを傷つけられることはない。
こんなにも腹が立ったのは久しぶりだった。その後も婚活は順調に推移はしなかった。まず申し込みがほとんど来ない。何人かの男性とは仮交際まで進んだが、その後デートを2、3回重ねた後に相手から振られる。
3年前に振られた彼氏以上の男性とは出会えていない。振られるぐらいなら自分から振ってしまおうとお見合い後に自分から断わりを入れるのが習慣になっていった。
「結果が出ないのは誰に問題があるのか」
あっという間に10ヵ月が経って季節も変遷していた。入会当初の期待はどこにいったのか。こんなはずではなかった。愚痴ばかりが頭の中を巡る。
一旦これまでの経緯を整理してみた。一点気になることがあった。カウンセラーとの関係についてだ。人が良く明るい人で自分の愚痴をひたすら聞いてくれる。けれど具体的なアドバイスをもらったことはただの一度もなかった。
また、結婚相談所に入って婚活していること自体にどこか安息を覚え満足している自分がいた。美咲は大学卒業時の就職活動を思い出した。苦しいことの方が多かった就活だが、企業にエントリーして面接を繰り返す自分に安堵していた記憶が蘇った。美咲はここで気づいた。変わらなければならないのは他人ではなく、もしかしたら自分自身ではないのかと。
【以下後編に続く】
【婚活ブログ 結婚相談所ブログ】